随筆練習帳

随筆(エッセイ)の練習帳。原稿用紙6~7枚分を目指して

自分のことを話すことが苦手で、もっぱら聞き手役に回る

 

 私の友人のほとんどは、自分のことをよく話す。好きなゲームやアニメや小説の話、大学生活の話、旅行の話、恋愛の話、宝塚歌劇団の公演に行った話、アルバイトの話など、話の内容を挙げていけばきりがない。とにかくよく話す。よくそんなに話すネタがあるな、と感心してしまうほどよく話す。私は主に友人の話を聞いている、聞き手役だ。

 高校生の時、何人かの先生と雑談する機会がよくあった。雑談と言っても、その場合も、やはり向こうが自身のことを話すのが中心で、私は主に聞き手役だ。足を怪我した話、校長先生のマグカップの話、息子の受験の話、先生のあだ名の話など、やはりたくさん話す。私はそれを聞いて、相槌を打つ。

 私はそのことを不満に思っているわけではない。そうやって人のいろいろな話を聴けるのは楽しい。それに、私は自分のことを話すのを苦手としている人間なので、かえって助かっている。天性の聞き手なのだ。教務主任の先生と会話していた時に、「あなたは相手の話を本当に楽しそうに聞くのね。こっちも嬉しくなっちゃってどんどん話を続けてしまうわ」と言われたときは心底嬉しかった。

 しかし、私と同じように自分の話をするのが苦手な人と会ったときは大変である。自分から話すのが苦手なうえにいつも聞き手役ばかりやっているので、何を話せばよいか、いちいち頭の中で考えてしまうのである。いつもは相手から話をしてくれるからそれに乗っかっていけばよいが、この状況では乗っかる話がない。その人と会いたいから会ったのに、うまく会話ができなくて微妙な雰囲気になってしまうのは情けない。

 そもそもこういった、私と同じタイプの人間に出会うことが珍しいので、場数をこなして慣れることも難しい。私の知り合いでも1人か、2人いるかのレべルだ。いつもは聞き役でも、私と話すときは向こうから喋ってくれる人の方が多い。

 なぜこんなにも自分から話し始めるのが苦手なのだろう。別に話題がないわけではないと思う。好きなものや趣味はあるし、普通に生活していれば愚痴とかも話せるだろう。多分、なんとなく自分の好きなことや自分の生活に後ろめたさを持っている気はする。自分のやっていることに自信が持てていないのだ。

 普段どんな生活をしているかとか、なぜか大っぴらに言えない。別に、例えば昼まで寝ているとか、一日中漫画を読んだりゲームをしていたりする、と正直に言えばいいのに、そういうことが言えないのだ。中学高校では中途半端に成績が良かったりしたから、さぞ休日も勉強ばかりしているのだろう、と思われているような気がして、そのイメージを崩すようなことを言う勇気もなかった。

 変に気にしいなので、「こんな話をしても退屈じゃなかろうか」とか、余計なことを考えたりもする。とくにに相撲が好きでない人に、やれ鶴竜が可愛いだとか、錣山親方がハンサムだとか、輝が今キているだとか言ったって困惑されてしまう。だからと言って相撲を知らない人向けに簡単な話をするのは自分がつまらない。だったら話さなくてもいいか、と思ってしまう。

 来春には専門学校への入学というイベントが待ち構えているので、その時にはもう少し自分のことを大っぴらに話せるようになりたい。ただ入学する学科(イラストレーション系)の性質上、さらに聞き手役の性格を強めることになりかねない気もしている。オタクは自分の好きなことをよく話すから…。