随筆練習帳

随筆(エッセイ)の練習帳。原稿用紙6~7枚分を目指して

好きな食べ物はなんですか

 私が人に愛されている実感がないとか、わかってもらえないという感覚を持つのは、私が人に自分のことを話さないということが一因となっているのかもしれません。これは卵が先か鶏が先かという話になってしまうのですが、「どうせ話してもわかってもらえないのだろう」という思いから、自分のことを話さないというのは、実際あります。

 

 聞き役に徹していれば―これはほとんど無意識にそうしているのですが―相手の話は大概聴いていて面白いものだし、相手だって話を聞いてくれる人がいれば嬉しいし楽しいですから、基本的にwin-winです。それで私は余計に自分の話をする機会が減ってしまうのですね。

 

 会話のきっかけとして質問はよく使われますが、なかなかうまく答えられない質問も少なくありません。困ってしまう質問に「好きな○○」があります。「好きな食べ物」を尋ねてくるとき、質問者はなぜか答えが一つであることを想定しているのです。私は好き嫌いが(食べ物に関しては)あまり多くはないし、何でもおいしく食べられる人間なので、正直に好きな食べ物を答え始めたらきりがなくなってしまいます。

 

 辛いものが好き、と言うと、少し個性が出ていいかもしれません。担々麺や四川風麻婆豆腐なんてのは大好きです。わさびも平気だし、タバスコや一味唐辛子は食卓に必須です。

 

 でも、甘いお菓子も大好きです。夏にはアイスが常に冷凍庫に入っているし、夏以外の季節にはチョコレートが常備されています。ドーナツ屋さんにもよく行くし、たまにプリンやコーヒーゼリーが無性に食べたくなることもあります。

 

 もう一つ個性のある答えをすると、シナモン好き、というのもありますね。家にシナモンパウダーの瓶が置いてあるくらい好きです。シナモンロールも好きだし、アップルパイも好き。外国産のお菓子は、シナモンがたっぷり入っているものがたくさんあっていいですね。家ではシナモントーストをよく作っています。トーストにグラニュー糖とシナモンパウダーをかけるだけなんですけれどね。

 

 あとはさっき担々麺が出てきたけれど、ラーメンは好きだし、お寿司も好き。お寿司の中ではつぶ貝が特に好きです。後はカツオとか、アジとか。お蕎麦も好きですね。鴨南蛮が一番好きです。

 

 自分では、煮物とか炒め物を作ることが多いですね。私の自炊のモットーは「いかに大量の野菜を効率よく摂取するか」にあるので、そういういっぺんに何食分も作れる調理法に頼ってしまいます。

 醤油と酒、みりんを使う和風の煮込みも、味噌煮込みも、コンソメで煮るのも好きです。寒い時期はポトフとかよく作ります。

 レトルトの中華の素を買ってきて、中華料理っぽいものを家で作ることもあります。たいていの場合、材料がそろっていません。回鍋肉なのに豚肉じゃなくて鶏肉が入っているとか。

 洗い物が面倒なのであまり作りませんが、気が向くとカレーも作ります。鍋が焦げ付くのが嫌なので、炊飯器を使って煮込みます。途中で灰汁だけとって、炊き上がる少し前にルウをとかせばいいだけなので、とても重宝しています。

 

 母の作る料理で好きだったのは、出汁がたっぷりの和風スープです。だしを取った昆布がそのまま入っていて、鶏の肉団子なり豚肉なり、後は白菜や白ねぎが入っていました。

 彼女は朝食を前の晩に作るのですが、それが毎回とても工夫された食事なのです。朝食を作ることは、彼女の趣味の一つのようにも見えました。

 あと、これは本当にたまになのですが、鶏肉の大きな照り焼きのハンバーグを作ってもらいました。上に載った卵黄を割って、家族3人でつつくのです。あれは本当においしかった。

 

 辛いものとシナモンのほかにもう一つ、個性のある答えがあるのを思い出しました。

 私はチョコミントフレーバーが大好きなのです。最近チョコミントが市民権を得つつあることが本当にうれしくて、お店で見かけるとつい手が伸びてしまいます。お菓子はもちろん、蒸しパン、メロンパン、チョコミント味の豆乳なんてものもありました。

 小さいころ、母にシャトレーゼに連れて行ってもらって、アイスを買ってもらうことがよくありました。その時から何故かチョコミントのアイスを選んでいました。子どもはミントのあのスースー感とかが苦手そうなものですけれど、不思議ですね。

 

 そうそう、好きな食べ物を尋ねられたら、本当はこのくらいのボリュームで回答したいのです。それが頭の中で渋滞して、うまく言語化できなくて、スムーズに答えられないのです。